精神保健福祉士を目指して日々勉強に励まれている皆様、お疲れ様です。
今日は、精神保健福祉士という国家資格がなぜ誕生したのか、その歴史的な背景について解説していきたいと思います。
日々の仕事にで忙しく現場を駆け回り、帰った後は勉強にレポートの作成にと、精神保健福祉士の歴史的な背景にまで思いを巡らす余裕なんてないかもしれません。
でも、そうやって日々忙しく、昼は患者や利用者のために働いて、夜は資格試験の勉強にいそしむ皆さんだからこそ、この精神保健福祉士という資格のできた歴史的背景や成り立ちについてきちんと知っおく必要があると思います。
そうすることで、日々の相談援助に対する向き合い方や自分なりの相談援助観がより深まり、勉強のモチベーションアップにもつながります。
仕事と勉強の合間のちょっとした一息に、この記事が参考になればと思います。
1. 精神保健福祉士の誕生前の状況
戦後間もない1940年代後半から精神科病院には、精神医学ソーシャルワーカーという職種の人々が配置されるようになりました。
1950年(昭和25年)に日本で初めての精神保健に関する法律である精神衛生法が施行されました。
これまで、精神障害者の扱いを定めた精神病院者監護(1900年制定)と、精神障害者の治療について定めた精神病院法(1919年制定)はこれを機に廃止されました。
精神障害者の私宅監置は禁止され、家族の負担も軽減されました。
精神衛生法では、精神障害者の医療と保護について定められ、都道府県に公立の精神科病院の設置が義務化されました。
当時、精神障害者の治療と言えば、まずは精神科病院への入院という流れが一般的でした。
このため、日本の精神科病院の平均入院期間は諸外国よりも突出して高く、長年にわたって、長期入院や社会的が多数を占めていました。
諸外国では、1960年代より、病院から地域へと地域移行支援を促進していきましたが、日本では依然として、精神障害のある人は積極的に精神科病院へ入院させる政策を取っていました。
1964年(昭和39年)、アメリカ駐日大使のライシャワーが精神障害を持つ青年にナイフに刺傷され、重傷を負わされる事件が起きます。(ライシャワー事件)
この事件をきっかけに、精神障害者を危険視する風潮は助長され、社会的に隔離を求める声もさらに大きくなりました。
これを受けて、翌年1965年、精神市衛生法が改正され、精神障害者の公費負担制度が創設され、措置入院制度が強化されました。
私立の精神科病院も多く設立され、精神科病院の病床数も増加し続けました。
1983年(昭和58年)、宇都宮病院の看護職員らの暴行によって、入院患者2名が死亡する事件が起きます。(宇都宮病院事件)
この事件は日本中で大きな注目を集めました。精神科医療現場での精神障害者の人権蹂躙が糾弾され、世界からも日本政府に非難が集中しました。
こうして、1987年(昭和62年)、新たに精神保健法が成立し、任意入院制度や解放病棟が創設され、患者の処遇改善が図られました。
1990年代に入ると、福祉施策の地方分権化が進められるようになりました。
1993年(平成5年)、障害者基本法が改正され、精神障害者も自立と社会参加の促進が図られるようになりました。
この流れを受け、1995年(平成7年)に精神保健法は精神保健福祉法に改正されました。
主な改正点としては、精神障害者の社会復帰の促進と自立への援助を始め、福祉関連の条項が付け加えられました。
2. 精神保健福祉士誕生について
精神障害者の社会復帰の促進と自立への援助を進める上で、相談援助を行う専門職の必要性が高まりました。
従来から、病院には精神医学ソーシャルワーカーがいましたが、社会復帰や地域での生活を支援する役割も担った専門職として、精神保健福祉士の国家資格化が検討されるようになりました。
この経緯を踏まえ、政府は1997年(平成9年)第140回国会に精神保健福祉士法の法案を提出。第141回国会で精神保健福祉士法が成立し、1998年(平成10年)4月1日から施行されました。
翌年、1999年(平成11年)第1回精神保健福祉士国家試験が実施され、4,338名の精神保健福祉士が誕生しました。
以後、大学や養成機関でのカリキュラムが整備され、毎年4,000人程度の精神保健福祉士が誕生しています。
精神科病院や地域の支援機関で精神保健福祉士の配置は進みましたが、日本の精神科病院の入院患者数は2000年代に入っても31万人を超えていました。
このうち、1年以上の長期入院患者が過半数を占めていました。
入院が長期化する原因としては、退院しても地域で生活をするための支援や制度が整っておらず、受け皿となる事業所や施設もないことが挙げられます。
入院が長期化するにつれて、退院率も低下していく傾向にあります。
当の患者自身も、退院後の生活が今よりもよいと想像できず、病院の外に出ることで世間の差別や偏見にさらされて生活のしづらさを感じるくらいなら、ずっと入院にいる方がよいと思い、退院への意欲も湧きにくい状態でした。
そこで国は、2006年(平成18年)に精神障害者地域移行、地域定着支援事業を創設し、長期入院者の退院支援を推し進めてきました。
退院促進支援事業は、現在に至るまで継続して実施されています。
3. 今後の精神保健福祉士の役割について
精神保健福祉士が制度化されてから25年以上が経ちましたが、その必要性は精神科病院や地域の支援事業所だけにとどまりません。
この他にも、メンタルヘルスの重要性の高まりや精神疾患による休職者の増加により、企業での復職支援。ひきこもりの増加に伴い、ひきこもり支援センターでの支援。発達障害者に対しての支援など、対象者やニーズも多様化しています。
さらに、学校現場で活躍するスクールソーシャルワーカーや、司法領域で活躍する社会復帰調査官など活躍の場も広がっており、多くの領域で専門性が求められています。
まとめ
精神保健福祉士の資格は、精神障害者が「入院医療中心から地域で自立して生活する」こと支援するために生まれました。
制度ができた背景には、かつての入院偏重の医療体制への反省と、福祉の視点を取り入れた支援の必要性がありました。
精神保健福祉士を目指す皆さんは、今後ますます必要とされる分野で、人々の生活を支える大切な役割を担う可能性を秘めています。
精神保健福祉士誕生の歴史と背景を知ることで、学習の理解がより深まれば幸いです。
コメント